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「台所でスパゲティーをすでているときに、電話がかかってきた。僕はFM放送にあわせてロッシーニの『泥棒かささぎ』の序曲を口笛で吹いていた。スパゲティーをゆでるにはまずうってつけの音楽だった。」(村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」新潮文庫より)
僕の好きな村上春樹の長編小説「ねじまき鳥クロニクル」の冒頭です。そしてこの小説を読み終えた後、ロッシーニの「La gazza ladre」を聴くといつもこの小説の冒頭の部分が自然に頭に浮かんでくるようになってしまいました。しかし「La gazza ladre」を聴くとスパゲティーをゆでたくはならないのが唯一の救いでしょうか。(笑) 収録されている曲はどれも一度は何処かで耳に挟んだことのあるような、有名な曲ばかり。そして肝心の演奏はといえば、これはもう近年稀に見る最高のカップリングではないのではと思えるDutoitとモントリオール響、悪い筈がありません。 80年代初頭に主にフランス物を中心として数々の素晴らしい録音を残してきたDtoitとモントリオール響ですが、90年代からはチャイコフスキーなどのロシア物等今までのイメージとは違う骨太のサウンドを要する大曲の録音も進めてきました。 しかしそこは繊細で緻密なオーケストレーションを作り上げるDutoitとテクニック、アンサンブルどれをとっても世界で指折りのオーケストラとなったモントリオール響ですから、骨太の大曲といっても決して荒削りで乱暴な演奏にはならず、とても緻密でコントロールされた演奏で「フランス物のモントリオール」とイメージを払拭しました。 このアルバムも92年にロンドン・Decca社からリリースされたもので、実に緻密で完璧。とても完成度の高い演奏を披露しています。 「Guillaume Tell」の有名なトランペットのファンファーレはブリリアント。金管合奏もとても余裕のある響きとなっており、その後に続く弦楽器のとても早いフレーズはとてもスリリングでスピード感満点。録音のバランスも文句なしです。 このスリリングでスピード感たっぷりの「Guillaume Tell」。前半の有名なトロンボーンのパッセージが来ると、ディズニーアニメのミッキーマウスが嵐に吹かれる様を思い出してしまいます。 何だかロッシーニの序曲は、僕にとって何かしらのイメージが強烈に付随してしまっているようですね。まったく困ったものです。(汗)
by buckup
| 2005-06-06 22:01
| CD。 (36)
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Comments(2)
Commented
at 2005-06-09 17:19
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
buckup at 2005-06-10 10:20
村上春樹を愛読されていたとは奇遇です。そういえば直向で真面目一直線の鍵穴さんのイメージは村上春樹の書く主人公に通じる所がありますね。
皆さんそれぞれに思いで深い小説があるようですね。井戸の静寂、音の無いモニターを通した静かな会話。読破後は何とも言えない喪失感が確かにありましたが、鍵穴さんの場合はさらに感慨深いものとなったのですね。 思い出というものはふと心の引き出しから急に顔を出す事がありますが、僕の場合はやはり音楽によって思い出される事が多いです。思い入れのある音楽をふと耳にすると、あの時あの場所の思いから不思議に匂いまで思い出す事があります。人間の心というものは本当に不思議ですね。
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