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イタリアの水路とゴンドラの街ヴェニス。その水の都に建つScuola Grande di San Rocco(サン・ロッコ信者会教会)。その歴史ある教会で1995年8月に収録されたのが、このアルバム。
Gabriel Consort&Playersは古楽のオリジナル楽器を使用するイギリスを代表するグループで、このアルバムのようにアルバムタイトルにちなんだ教会での収録をすることの多い古楽アンサンブルです。 収録曲はイタリア・ルネッサンスでもおそらく一番有名であろうヴェニス派の作曲家・Giovanni Gabrieli(c.1555-1612)を中心にBartolomeo Barbarino(fl.1593-ca.1617)の曲を、まるでコンサートライブを聴いているかのようなとても旨いプログラムで最後までじっくり聞かせてくれるものです。特に僕の好きな曲の一つでもあるトラック8に収められている「Domine deus meus a 6」では素晴らしい浮遊感漂うこの曲を非常に旨く音楽的にコントロールし、男性6人による素晴らしい合唱を聞かせてくれます(唯惜しまれるのはアカペラではなくオルガンをバックに付けているところでしょうか。この曲の真髄はアカペラにあると思うのです。まぁしかし歌手にとってはオルガンがあった方が音程は取りやすいのですが。。。) またこのアルバムは純粋な古楽のアルバムですので、マーラーの交響曲やワーグナーのオペラを聴く大音量で聴くと、音の響きや教会の美しいエコーが裏目に出て音が崩壊してしまうので要注意です。 イメージ的には、リスナーを縦長の教会の後方気味中央に配置。演奏家までの距離は10~15mと考えて、楽器やソリストの奏でる直接音を楽しむというよりは、この10~15mの離れた距離から聞こえる美しいエコーのかかった距離の全体音を楽しむというコンセプトで聴いた方がこのアルバムの意図にも沿うでしょうし、美しいマルチ再生による教会の残音を楽しめます。例えて言うなら、大味の豪快なステーキを戴くというよりは、繊細な手の込んだ小さな和菓子を時間かけながら目で楽しみながらゆっくりと戴くという楽しみ方が適したアルバムです。大音量はご法度だと思って聴いた方が音も柔らかく、硬質なカウンターテノールの声質も和らぎ耳に心地良くなります。 CD層の音質も勿論優秀ですが、このアルバムは教会の音響をそのまま部屋に持ってきたような音場再生が可能なSACDマルチ再生で聴いた方がより楽しめるような気がします。 基本的に素晴らしいオーディオ機器があると大音量で聴く事に喜びを見出しがちですが、このアルバムはまさにその反対。小音量でも楽しめる、もしくは小音量ならではの箱庭的音響を楽しむという、まさに古楽器アンサンブルならではのアルバムではないかと思います。 古楽器アンサンブルの真髄は、やはりはじめから最後まで一貫する、コントロールの良く効いた抑制された強音と染み入るような繊細な弱音にあると僕は思うので、このアルバムはそういう意味で音量の抑制の忍耐力を楽しめる(もしくは要する)まさに教会で聞くルネッサンス音楽のコンサートを忠実に体現したアルバムだと思います。
by buckup
| 2005-08-10 05:25
| SACD。 (63)
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